たらやんとぼく——ライター・神田桂一の
「ドラマティックバッティングセンター」体験記

文=神田桂一
写真=荻原楽太郎

神田桂一(かんだ・けいいち)ライター/編集者。『POPEYE』『スペクテイター』『ケトル』などで執筆。新刊『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)は6刷11万5千部のベストセラー。

某月某日、あるライターの友人から唐突に電話があった。
「神田さん、野球に詳しいですか?」
何を隠そう、僕は、高校時代、軟式野球部に所属していたのである。
僕は、得意げに、こういった。
「詳しいも何も、やってたからね!」
「そんな神田さんにぴったりの仕事があるんですよ!◯日◯時に、大泉にあるバッティングセンターまで来てもらえませんか」
僕は、わかったと電話を切った。そして当日までなんら詳しい情報も聞かされず、僕は、そのバッティングセンターに言われた時間に到着したのであった。それは、まるで、電波少年で見た、T部長に目隠しされてどこかに連れていかれるタレントのようでもあった

舞台は、バッティングセンター。
ここで甲子園気分が味わえるだと!?

そうこうするうちに、僕は、ここが甲子園球児気分を味わえる「ドラマチックバッティングセンター」の開催場所で、今日がプレオープンの日であり、僕はその体験レポートをするために、遠路はるばる練馬まで連れてこられたのだと知ることになった。何がドラマチックかというと、女子マネや吹奏楽、チアなど「あなた専用」のキャストたちが、迫真の演技と本気の応援で、ふつうのバッティングセンターを甲子園に変えてくれるんだという。ほうほう。面白そうではないか。

到着すると、すでに前の人の寸劇がはじまっていた。
おとなしく順番を待つ。

僕の高校時代は、90年代ど真ん中。オウムと阪神大震災があった暗い時代だった。おまけに、軟式野球部なので、どれだけがんばっても、甲子園には行けない。軟式野球部の全国大会は、同じ兵庫県の明石球場で開催される。しかも決勝しか放映されない。そのまたさらに、僕が高校3年生のときは、予選の一回戦でPL学園に当たり、ボコボコにされて終わった。PL学園は、軟式野球部でも強豪校だったのだ。僕は、予選で負けた日に、とっととユニホームを脱ぎ捨てて、それ以来、野球からは距離を置くことに決めた。
そんな僕を、甲子園に連れて行ってくれるだと? 望むところだ。

このボタンがすべての始まりだ。
絶対押すなよ!押しちゃダメだぞ!

右利き用に、撮影のビデオカメラや報道陣用の椅子などが配置されたバッターボックスに、左利きの僕は、まず、謝りながら、左バッターボックスに立つ。そして、そこにある、巨大なボタンを押す。すると、高校球児とマネージャーが出てきて、寸劇が始まった。どうやら、球児のほうは、怪我をしてまで無理に出場しているようだ。それは、僕が、なんらかの理由で甲子園に出ていないためだと推測される会話が聞こえる。

まずは練習。3回分、振ってみたが、
なんとかバットには当たった。

そう言えば、僕の高校の軟式野球部も9人しかいなかった。ひとりでも欠けると試合ができないので、誰も辞められない。僕は、実は、途中で落語研究会に浮気していたのだが、キャプテンが、菓子折りを持って僕のところまで来て、出場してくれないと困ると言った。そして僕は、軟式野球部に戻ったのだ。また、僕らの部は、練習試合の人気が凄かった。要は噛ませ犬として大活躍していたのだった。9人しかいないので、弱小だった。バットをまともに振れないやつもいた。彼はなぜ野球部に入ったのだろう。そんな疑問も9人揃えるという大義の前では打ち消された。

怪我をおして出場している部員に代わって
代打で僕が打つという設定。

話を戻す。とにかく、僕は寸劇に巻き込まれ、代打として、甲子園に出場することになるのだ、盛大なチアリーディングも応援に駆けつけ、気分は盛り上がる。こんな応援なかった。ていうか、観客なんていなかった。僕の気持ちはだんだんと高揚してくる。そして、そんな応援のなか、ピッチャーとの一対一の対決がはじまった。僕は、打てると思っていた。しかし、ピッチャーが緩急をつけた球を投げてくるので、タイミングをあわせるのが難しい。こ、これが甲子園の魔物なのか……。僕は見事三振していた。

三振に終わり、部員や応援団から、
辛辣なブーイングを浴びる僕。

僕の軟式野球部の先輩のキャプテンに凄く熱い人がいて「たらやん」と呼ばれていたので、ここではたらやんと呼ぶことにする。たらやんは、試合が終わると絶対に僕らを集めて反省会をする。そして、絶対、泣く。僕は、当時、しらけていたので、その熱さを受け止めることができず、スカしていたのだが、今、甲子園を体験した気分になって思うことは、本気で何かをやることの素晴らしさだろうか。
たらやんの守備はファーストで、試合で何度も平凡なファーストフライを落とし、グラウンドの端にある、鉄棒で屈伸しながら、クビを横にかしげて、今日は調子が悪い的なアティテュードを僕らにアピールしていたことがあったが、あれだけ練習して、反省会では、熱く語り、泣き、その上で、あの平凡なファーストフライを落とすとなると、もう才能がないというのは明らかなのだが、才能がなくてもやることの意義みたいなものが、どれだけスカした僕でも、感じ取れるものがあって、その熱さみたいなものを、この、イベントでも体験できるのではないかと思ったのだ。

一生懸命バットを振ってますが、
タイミングをずらされて見事に三振してます。

だから、どんなに野球が下手くそで、甲子園なんか無理で、野球なんかそもそも興味がない人にも、ドラマチックバッティングセンターに足を運んでほしい。開催日は8月30日である。

「ドラマティックバッティングセンター」
参加者募集中!

8月30日、あなただけの甲子園
「ドラマティックバッティングセンター」が
開幕する!

8月30日(水)『バッティングプラザ大泉』で行われるイベント「ドラマティックバッティングセンター」は、現在参加者をTwitter上で募集中(26日24時まで)。参加方法は『ぼくらの甲子園!ポケット』公式アカウント(@koshien_pocket)をフォローして、ハッシュタグ「#あなた専用甲子園」「#参加希望」をつけてツイートするだけ。当選者にはダイレクト・メールで8月27日(月)までに案内がくる。また、当日ホームランを出した人には100万円が当たるチャンスもあるそうだ。

『ぼくらの甲子園!ポケット』
大好評配信中!

『ぼくらの甲子園!ポケット』はシリーズ累計600万ダウンロードを超す「ぼくらの甲子園!」シリーズの最新作です。プレイヤーは高校球児となり、同じチームのメンバーと切磋琢磨しながら甲子園出場、そして優勝を目指します。共に試合を戦う9人(ベンチのメンバーも参戦できるので最大15人)の仲間とのチームワークを体感できるのが醍醐味です。また、カスタマイズで愛着を持ちながら育成できるキャラクターや、サイコロで楽しみながら続けられる練習モード、相手チームとの臨場感ある駆け引きの試合モードといった演出も楽しみの一つです。

ジャンル
共闘型スポーツRPG
ダウンロード
Google PlayApp Store
対応OS
Android 4.1、iOS7.0以上
価格
無料(アプリ内課金あり)※アプリのご利用にはパケット通信料が必要です。
企画・開発
カヤック
ゲーム公式サイト
https://koshien-pocket.kayac.com/